株式会社スピンラボ:ベテランと新人の差が分かる「問題質問」

自社の営業担当者全員が実践することが業績向上の最初のステップとなると思われます。

雑誌掲載記事

第4回「ベテランと新人の差が分かる「問題質問」」

状況質問で得た情報をベースに、顧客の抱えている現在の不完全な状況・不満を聞く質問が問題質問だ。現状に対し、面談相手がその立場で感じている不満を語ってもらう。

事実を確認するための質問である状況質問に対して、SPINのPに当たる問題質問(Problem Questions)は、考え方を聞くための質問になる。一例をあげる。

●今の機械は使いにくくはありませんか
●このシステムは信頼度の点でご不満はありませんか
●ロスが多いとお困りではありませんか
●ロスの原因はどんなことが考えられますか

といったところだ。 問題質問は状況質問以上に、商談の成否に大きく影響する。特に、小型商談おける影響が強く、売り手が問題質問をたくさんすればするほど商談成功の確立は高まっていく。大型・複雑商談でも次の展開の扉を開くキーとなるので、やはり重要だ。 ソリューション型営業、問題解決型営業の第一歩は、問題質問ができるかどうかで決まる。状況質問は誰でも出来るが、未熟な営業がこの問題質問を顧客にするには勇気がいる。特に日本人の倫理観を前提とした時、この種の質問はためらわれる。

「お客様に失礼になるのでは」「こんな質問をしたらお客様の感情を逆なでするのでは」と考えてしまうからだ。 問題質問が自然にできるか、不自然になってしまうかの違いは、営業担当者に対する顧客の信頼度による。信頼している営業に対して顧客は進んで答えを返してくれるが、信頼できそうもない営業が相手なら「どうして私がこんな質問に答えなければいけないのか」となってしまう。ベテラン営業と未熟な営業を比べた時、この問題質問の数が大幅に違うことがハスウェイト社の統計で立証されている。ベテランと新人の業績の大きな違いはここに理由がある。

問題質問をする"コツ"

問題質問のための"コツ"をつかもうとしても、売り手の立場で考えては答えが見つからない。顧客の立場になって、どんな態度と質問の仕方なら答える気になるかを考察する。 まず態度。「私はあなたの抱える問題を何とか解決するお手伝いをしたい」と心に念じつつ問題質問をすることだ。単なる興味本位の気持ちで問題質問をしたら、その中途半端な気持ちは確実に顧客に伝わってしまう。
「私は(もしくは私の会社は、私の会社の商品は)必ず御社の問題解決にお役に立てる」との信念を持って問題質問をすることだ。面談時応接セットに深々と座り、ふんぞり返った態度で問題質問をするようではダメ。 質問の仕方にも工夫がいる。「今、お使いのXXに対するご不満な点は何でしょうか」といった直接的な言葉を使うと相手の気持ちを逆なでしてしまう。

第三者を例にあげて質問すると相手は答えやすくなる。「私が担当している某社でもXXは使いにくいとおっしゃっていましたが、御社ではいかがでしょうか」「XXは一般的に使いにくいと言われておりますが、御社でいかがでしょうか」といった感じだ。 顧客に改善についての考えを聞くのも良い。
「ご担当として改善なさりたいとお考えの点はどのあたりでしょうか」。このちょっとした工夫があれば、顧客は素直に答えてくれる。顧客の気持ちを考えすぎて、ついつい長い問題質問をする傾向があるが、これも良くない。10秒の答えをもらうために2分くらいの口上を述べる人がいるが、これも考え物だ。

「先ほどのお話ですと、お使いのシステムはもう5年もたっているようですし、最近の技術革新の進歩を考慮しますとかなり問題があってもおかしくありません。エンドユ−ザ−の皆様は…。
…ということで何か問題を感じている点はございますでしょうか」といった感じでダラダラしゃべるケ−ス。その時の顧客の気持ちは「早く言いたいことを言え!」である。質問は少ない単語で要領良くすること。
長い言葉での質問には短い答えが帰ってくるし、短い質問には多くの答えが帰ってくる。

売り込みのタイミングも大事

導入したばかりのシステムについての問題質問をすると、
相手は「あなたは嫌がらせに来たのか」となる。面談相手が導入の責任者や導入推進者の場合も同様の結果になる。 自分(もしくは自分の会社)が売ったシステムも同じ。前任者が売ったのだから、今担当している自分は関係ないとは思ってはいけない。 自分(もしくは自分の会社)が売ったシステムも同じ。前任者が売ったのだから、今担当している自分は関係ないとは思ってはいけない。

問題質問をしてお客様の口から「そうなんだよ。XXは使いにくくて困っているんだよ」の言葉を聞くと営業はどう感じるだろう。 「営業としての血が騒ぐ」「待ってました」「しめた」と感じ、次の瞬間にクロ−ジングに入ろうとする。良く言われている「落としにかかる」行為に入ろうとするわけだ。 問題点や不満を聞くと売り手は商品説明をしたくなる。「今おっしゃいました問題ですが、当社の○○は△△の特徴を備えておりますので、その問題は簡単に解決できます」といった感じである。この行為は小型商談では正しい。かなりの確立で商談成立となるだろう。
しかし大型・複雑商談ではまだ売り込みのタイミングにはなっていない。SPINとは関係ないが、以前大洗沖でひらめ釣りを経験した際の船頭さんのアドバイスは「アタリが来たら20数えてから合わせろ」だった。まさに大型・複雑商談はひらめ釣りと一緒である。 本連載の第2回目でニ−ズについて説明したが、問題質問の結果、客から出てくる不満発言はまだ潜在ニ−ズにすぎない。
単に問題と感じている気持ちの表現であって、感じている問題点を改善したいという強い顕在ニ−ズにはなっていない。
ここで売りに入っても、客は買いたい(問題解決したい)気持ちになっていないので商談成功の確立は低い。この時点では商品説明は後回しにし、顧客の感じている潜在ニ−ズを顕在ニ−ズに引き上げる作業をしなくてはならない。
その役割を演じるのが次回に説明するSPINのIの示唆質問(Implication Questions)と、
Nの解決質問(Need-payoff Questions)である。 売り込みたい商品がソリューション型であるならば、自社の営業担当者全員がこの問題質問を習得し実践することが業績向上の最初のステップとなるだろう。

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